匙作り虎の巻
そう題して、我流ではあるが私の匙作りを紹介していきたい。
ひょんなところから材が入手できたなら、自分の為、家族の為に匙を彫ってみよう。
因みに、10年位前の私のファーストスプーンはこちら。
恥ずっ!
なんだこれ!
穴があったら速攻で潜り込んで一生出てこないくらいの恥ずかしい仕上がりだ。
山で拾った檜の枝を理屈もわからない状態で夜な夜な二週間くらい掛けて彫っていた思い出。
マイスプーンを自作してみようと思われる方がいらしたら
私の初スプーンより悪いものにはならないはずなので、自信を持ってトライしてほしい!
必要な道具は、【関連商品一覧】のページにまとめてあるので、そちらも参考にして頂きたい。
スプーンブランク
まずはスプーンブランク(匙の木地作り)から。
今回使用する木は直径30㎝程度の桜材。
30㎝程の長さで玉切りにしたものを小割りにしていく。
小径木なので、今回は直接フローで分割できたが、口径が大きい場合は、別途、斧やくさびを用いる。
Tool manufacturer:
S. DJÄRV HANTVERK AB https://djarv.se/en/
伐倒後、数時間〜数日経っているものであれば、芯から数本の小さな割れが目視できる。
小割りにする際には必ずその割れの走りに沿って割るのがポイント。
ここでの割れは、後々乾燥し始めた際に必ず大きく割れる箇所である為、ここでクリアしておく必要がある。
また、日照条件等により、芯が大きくズレているものがあるが、その際も必ず芯を中心として割ること。
斧ではつる
今回は柾目で木取りをするも、赤身部分が少ない為、赤白ツートンでの仕上がりは難しい状況だ。
まずは、樹皮を削ぎ落とし、赤身部分も適度な厚さが確保できる程度まで削ぎ落とす。
樹皮に近い部分は強度も弱く、仕上げた際に毛羽立ちやすい部分なので、可能な限りはつり落としてしまおう。
ボウル(掬う部分)の角度決め
柾目の板状まで形成が出来、続いてボウル部の角度決めをする。
新しい切断面側をボウル部分とし、鋸で切り口を入れる。
この角度(切り口の深さ)により匙の立体感や実際の使用感にも影響する部分である為、イメージする匙によって慎重に決める。
因みに、お玉や角度深めな取り分け匙などは、しっかりと切り込みを入れて角度を確保する。
匙形を描く際のバランスの取り方については後述する。
伐倒されて数日内の生木であれば問題ないが、しばらく保管されていた材などでは、
当日に鋸で切った切断面側をボウル部分とした方が、隠れクラックによる割れの出現が低減する。
古い切断面は水分の蒸散が進み、目視できないクラックが発生していることが多々あるからだ。
どうしても古い切断面側を使用せざるを得ない場合は、切断面から遠ざけ、ゆとりを持った匙形の毛描きが必要となる。
釿(ちょうな)
前項で入れた切り口を中心にV字にはつり落としていく。
手斧での方法がメジャーではあるが、私は釿を用いる。
Tool manufacturer:
どちらが良し悪し、効率的かどうかはなく、単なる慣れによるものである。
ここでは、力加減のコントロールが大切で、刃が深入りした場合、仕上げの段階あたりでクラックが出現して泣きを見る。
慣れが必要な工程の一つだ。
グリップ面のはつり落とし
ボウル部のV字形成を終えたら、次は手斧によるグリップ部のはつりへ。
まず、グリップとなる部分の左右側をボウル部へ向かってはつる。
ここで注意することは、勢い余ってボウル部に刃を当てないよう力加減をコントロールすること。
当たってしまった場合はクラックの原因となる為、この時点で面を削り直して修復が必要となる。
左右のはつり完了後、中心部分を同様にボウル部に向かって削り落とす。
ボウル先端側も同様に左右と中心を先端に向かって削ぎ落とす。
これで概ね、匙形を描く前段階は完了。
…次回の【後編】では、匙形の毛描きから、全体的なはつりによるブランクの完成までを記事にする